- アンリ
- 「……リリアーナ」
- 彼は泣いている私の名を呼ぶと、そっと――
- 私の髪に触れた。
- そのまま、優しく……。
壊れ物を扱うみたいに引き寄せられる。
- リリアーナ
- 「……?」
- 私は戸惑いながら、顔を上げた。
- アンリ
- 「……すまなかった」
- 視界は涙で滲んでいたけど、すぐ目の前に彼がいるのは、ちゃんとわかる。
- アンリは慰めるように――
- そっと、私のこめかみに唇で触れた。
- アンリ
- 「…………」
- 衝撃で涙が止まる。
- リリアーナ
- 「……怒って、ない、の……?」
- アンリ
- 「ああ」
- 私の震える声に、彼は静かに答えた。
- アンリ
- 「君を邪魔だと思ったことはない。
ただ……。巻き込みたくなかった」