- ニコラ
- 「じゃあ、どうして昨日は――
……僕のベッドで待っていなかったの?」
- リリアーナ
- 「!」
- いつになく子供っぽい言葉を囁いて、彼は私を抱く腕に力を込めた。
- 逃れようとしても、びくともしない。
- 私は声を上擦らせながら言い訳する。
- リリアーナ
- 「き、昨日の夜は、ニコラが急な仕事で出掛けたでしょう?」
- リリアーナ
- 「ダンテが、きっと帰りは遅くなるって言っていたし……」
- リリアーナ
- 「先に客間で休んだらどうかって
ジュリアも勧めてくれて」
- ニコラ
- 「…………」
- リリアーナ
- 「……ニコラ?」
- ニコラ
- 「僕は、君がここで待っているんじゃないかって
楽しみに帰ってきたのに」
- ニコラ
- 「現実には冷えたベッドがあるだけで、すごく寂しかったよ」
- リリアーナ
- 「……それは……」
- 私は言葉に詰まりながら答えた。
- リリアーナ
- 「……ごめんなさい。だって――」
- リリアーナ
- 「できなかったの。このベッドで寝ると余計に寂しくなるから……」
- ニコラ
- 「?」
- リリアーナ
- 「……だって、ニコラのこと、思い出しちゃうもの」
- 彼の瞳の奥で、何かが悪戯に煌めいた。
- ニコラ
- 「ねえ、リリアーナ……」