アル
「お父様、私……っ」
マーリン
「エクトル殿。……貴方の可愛い娘さんを暫くお預かりしてもいいですか?」
エクトル
「マーリン……」
マーリン
「お久し振りです。お元気そうで何よりです」
エクトル
「お前も相変わらずのようだな」
マーリン
「まさか聖剣が……貴方の娘を選ぶとは。運命とは……本当に面白いものですね」
エクトル
「……運命、か」
マーリン
「異論はありませんね?」
アル
「お父様!?」
まるで私の意志など存在しない会話に、私はつい責めるような声を上げてしまう。
お父様なら、ケイ兄さんが選定の儀に参加することさえ反対していたお父様なら、これは間違いだと言ってくれると思っていた。
エクトル
「……アル」
お父様の大きな手が、私の頭を撫でた。
エクトル
「……元気でやるんだぞ」
アル
「お父様!?」
エクトル
「覚えているだろう、私が前に何度も言ったことを。……剣は己を映す鏡だと」
アル
「もちろん覚えています!」
エクトル
「自分の心に常に問うのだ、お前の『真実』を」
アル
「お父様……?」
まるで、まるでもう二度と逢えないような気がした。
お父様はちゃんと優しく微笑んでいるのに、私には泣きそうに見えた。
エクトル
「……───私はお前を信じているよ」
それきり、お父様は何も言わなかった。
ただ微笑んだまま、立っているだけだった。
マーリン
「さぁ行こう、お嬢さん」
アル
「!?」
マーリンが私の腕を掴んで、強引に抱き寄せるみたいにして歩き始める。
そんな私の後を、何人もの衛兵達が槍を交差させるようにしてみんなから遠ざける。
まるで、私は罪を犯した人間みたいだった。