- オランピア
- 「いた……っ!」
- 時貞
- 「大丈夫!? もしかして怪我した!?」
- オランピア
- 「平気よ、少し捻ったんだと思う」
- 時貞
- 「それだけじゃないよ、ほら踵のところ切れてる!」
見れば、鮮血が細い糸のように水に溶けてゆく。
- 時貞
- 「すぐに玄葉のところに行こう。辻馬車を拾えるところまでは僕が背負うから」
- オランピア
- 「え! 大丈夫よ、これくらい……」
- 時貞
- 「何故そう言い切れるの? もしひどく腫れて、膿んだりして舞台に立てなくなったらどうするの?」
- オランピア
- 「本当に平気よ、怪我なんて昔はしょっちゅう……」
- 時貞
- 「そういう問題じゃないよ」
- 時貞
- 「もしかして僕が頼りないって思ってる? 背負ったら倒れるとでも?」
- オランピア
- (いえ、そこまでは……少し思ってる)
- 時貞
- 「これでも鍛えてたんだからね、ほら早く!」
- オランピア
- 「……ごめんなさい、重いでしょう」
- 時貞
- 「だからこれくらい平気だって。それって僕を非力だと馬鹿にしてるってことだよ?」
- オランピア
- 「そうは言ってないわ、ただ……」
- 時貞
- 「米俵より全然軽いから大丈夫」
- オランピア
- (……米俵を担いだことがあるの?)
- 時貞
- 「やっと……お姉さんのために何か出来て嬉しい」
- オランピア
- 「……!?」
- 時貞
- 「僕がお姉さんのために出来ることは何かないかなって……ずっと考えてたから」