さらり、と。
璃空の真っ直ぐな髪が私の頬に触れた。
- オランピア
- 「……!?」
- オランピア
- (こ、こんなこと……気にしている場合ではないでしょう)
- オランピア
- (せっかく教えてもらっているのに、不謹慎だわ)
そう───思っても。
私のすぐ後ろにぴったりと彼が寄り添っていて、
全く集中出来ない。
- オランピア
- (ばあや……ごめんなさい……っ)
本当に、本当に弔う気持ちはあるのだ。
でも背中のすぐ側の気配が、どうにも恥ずかしい。
細身な男性だと思っていたのに、
触れる肩の幅が自分とまるで違う。
- オランピア
- (禊ぎの時を思い出せばいいかしら、心を無に……清浄に……)
- 璃空
- 「指先が硬い、もう少し柔らかく」
- オランピア
- 「は、はい!」
- 璃空
- 「もう少し躯を後ろに引いて」
- オランピア
- 「……っ」
- オランピア
- (でも、そうすると……もっと貴方の体温に近付いてしまうんだもの)
とてもとても、心を無にすることなど出来ない。
- オランピア
- (落ち着いて、あの時の璃空の舞を思い出して……)
- 璃空
- 「な、なかなか……筋がいいと思うぞ。流石は【白】の舞い手だ」
- オランピア
- 「そ、そうかしら? お褒めに預かりまして……恐縮です」