口の中に、再び薄荷糖の味が広がった。
つんと、甘く。
それはお互いの唇の味だ。
僅かだけ離れた唇から、そんな言葉が洩れた。
そしてまた口付けられる。
最初は少し迷うようだったそれは、すぐに熱を孕む。
その瞬間。
『今すぐ仕事を辞めてアパートを出て、
実家で花嫁修業して欲しい、と』
けれど今は、そんなことを考えたくなかった。
そんな問題があることを信じたくなかった。
それは一体どんな理屈かと思いつつも、
弁解する彼が妙に可愛らしくて抗えない。