不意に、翡翠が袂の中から何かを取り出した。
ちら、と窓を鏡代わりに映して見ると、
可愛らしい撫子の簪が挿さっている。
思わず鸚鵡返しに呟いてしまったのは、
あの時のことが───彼と初めて口付けた時のことが浮かんでしまったからだ。
私は夏祭りに誘われた時のことを思い出し、
恥ずかしくなった。