沢野井から【今日、科学部は特別な一日を過ごす】、
との連絡があった貴女が、その日最初に出会ったのは――？
よ、久しぶり。ここの所、タイミング悪くて
部室で会えてなかったから……なんか変な感じだな。

そういえば部長からのメール見たか？
相変わらずよくわからない内容だったけど……
一番気になったのは、やっぱりあそこだよな？

【今日この、7/29は。
宇宙創世にも並ぶ、歴史的な一日になるだろう】――

つまり……どういう意味なんだろうな？
説明を求めても専門用語が飛んでくるだけで、
具体的に何をするのか、さっぱりわからないし……
まあ、危険じゃなければ俺は別に構わないんだけど。

あの人の場合、カップ麺でも作るような気軽さで
【宇宙】を作り出すから困るよな…………
ほら。いつだったか、ブラックホールとか作ってただろ。
……はっ！？　今日の集まりもまさか――？

い、いや駄目だ。科学部の謎のジンクスで、
部長関連は悪い方向に考えるとなぜか現実になるからな。
たぶん、きっと、おそらく。
何もない平和な一日のはずだ……そうであってくれ……。

…………まあ、俺たちだけで悩んでても仕方ないか。
諦めて――って言い方も変だけど、部室に行こう。

…………。

ほんと……今日も暑いな。
帰りにアイスでも買って帰るか。

それじゃ、また今日も一日。よろしくな。

沢野井から【今日、科学部は特別な一日を過ごす】、
との連絡があった貴女が、その日最初に出会ったのは――？
――せぇぇぇええええんんんんんぷぅぅぅぅわぁぁぁああいいいィ！！

そこに！　おわすは！　全ての神々もひれ伏す！　圧倒的存在……！！
マイ・エキセントリック・ビューティフル・ハイパー・ヴィーナス！！
愛しの先輩じゃあぁないですかあああああああ！！！

………………ぜぇ、ぜぇ……。
あ、ちょっと待ってください。
自転車の漕ぎ過ぎで死にそう。

…………。

………………よ、よし！　復活！！

いやーーー朝っぱらから
先輩の愛らしいお姿を拝見できるとは！！！
俺は世界一、いや！　全宇宙一の幸せものといっても過言ではない！
はー……その謙遜する姿すらＬＯＶＥ。
トゥルーＬＯＶＥ。先輩が存在する世界すらＬＯＶＥ。

なんか部長が今日は【特別な一日】とか言ってましたけど？
俺にとっては、先輩がいるこの世界が既に特別なので！
ということで、先輩！　俺とデートに行きましょう！！
もっさい男どもは放置して！！

……え？
【カガハルくんがそう言ったら、これを渡すように言われた】？
なになに……『【デート】という単語を声帯から読み取り、
過保護怪人アサナミンを自動召喚する装置を、
早朝から君の自転車に取り付けて――』……何してんの部長！？

……って、あっちからなんか土煙をあげて迫ってくるし！？
と、とにかく逃げましょう！　乗ってください先輩！！

沢野井から【今日、科学部は特別な一日を過ごす】、
との連絡があった貴女が、その日最初に出会ったのは――？
しょっくーーーーーーーーん！！
よくぞ……よくぞ集まってくれた！！

7/29を繰り返す特別な日々の中でも、
ひと際【特別】だとそう断言できる、今日この日！！！
土岐島高校科学部が誰一人欠けることなく、
この場にいることを部長として、僕は誇りに思う！
そうとも！　これも君たちの胸に、
熱きサイエンスソウルが宿っているからこそである！！！

ゆえに……！　ゆえにだ！！
誰一人として、指定の時間にやってこなかったことは責めるまい！

…………。
不安になりすぎて、もう一度メールを一斉送信しようか悩んだぞ！？
まさか紅一点の君すらも、駅前のケーキを食べてから来るとは――
くぅ……！　べ、別に泣きそうになってなんか、ないんだからね！？

――こほん、気を取り直して……！
さて既に連絡している通り、本日は【特別な一日】である！

それがどう特別か。
ふーむ？　ふふふのふ。ここで話すべきか……
いや、それとも、もう少しもったいぶるべきか……！

篠原涼太くん！？　それに浅浪顧問まで！
なぜナチュラルに帰ろうとしているのかね！？
待ちたまえよ！　もう少し僕の話に興味を持ちたまえ！！

ええい、ともかく話は現地でするとしよう……！！！
皆、今日は少しばかり遠出をするぞ。
――ん？　目的地を先に言わないと安心できない……？
まったく、欲しがりさんめ！　そこまで言うのならば教えよう。
僕たち科学部が、今日向かう場所。それは――【向日葵畑】だ！！！

沢野井から【今日、科学部は特別な一日を過ごす】、
との連絡があった貴女が、その日最初に出会ったのは――？
……あれ、先輩。どうしてこんな所に。

……僕ですか？
見ての通りですよ、日陰で読書です。
ここは風通しが良いし、午前中なら
暑さでうだるほどじゃないですから。

……。

…………。

…………行かないんですか？　部室。
今日はなんでも【特別な日】って話じゃないですか。
先輩も含めて、他の皆も張り切ってるもんだと思ってましたけど……

へえ……？　ちょっと意外ですね。
え。いや……邪魔ってわけじゃないですけど……
い、居たいなら勝手にしてください。
僕の許可なんて必要ないでしょう。

……。

…………。

…………あの。
手持ち無沙汰なら、先輩も読みますか？
もしかしたら読んだことあるかもしれませんけど――

なら……よかったです。
お互いに、きりよく１章程度読んだら、部室に行きましょうか。
あんまり遅くなると、部長が本気で泣きながら電話してきますよ。

……別に気になるわけじゃないんですけど。
今日は、皆で何をするんですかね？

沢野井から【今日、科学部は特別な一日を過ごす】、
との連絡があった貴女が、その日最初に出会ったのは――？
――あれ、何だよ。お前がこっち側にいるなんて珍しいな。
どうした、気分転換しつつ登校か？

ははは、気持ちはよーくわかるぜ。
ただでさえ自宅と職場――あ～、お前は勉強の場か。
の、往復。ルーチンワークだもんなあ。
ましてや世界はループしてるし？
たまには違う道を探してみたくなるのは、当然っちゃ当然だよな。
そんで？　何かいいもんは見つけられたか？

……いや、俺もよ。普段はまるで気にしてなかったんだが、
こう無限に時間があると普段気にならねえ場所まで
じっくり見ちまうんだよな……
雲が早い、遅い――とか。
コンクリのひび割れが、どこまで続いてるのか――とか。
無駄に、どーーーでもいいことを追いかけたくなっちまうんだ。

……ん？　そんなこと気にならねえって？
ま、お前も大人になったら分かるだろうさ。

ところで……今日も顔出すだろ？
ほら、沢野井のやつが妙に張り切ってたじゃねえか。
二度とない【特別な一日】だから――とか、なんとか。

まあー……
ループの中でクリスマスやら何やらを過ごしてる身としては、
これ以上特別な日ってなんだよな～とか思っちまうけど……
あの科学バカやうちの翔、それに綿森のやつも含めて、
お前たちがいつも楽しそうにしてるのだけが、唯一の救いだよ。

――特別な一日、ね。
警察と消防のお世話にならなきゃ上出来だが……
さて、どうなることやらだな。

沢野井から【今日、科学部は特別な一日を過ごす】、
との連絡があった貴女が、その日最初に出会ったのは――？
やぁ、おはよう。この時間に君がツリーに来るのは珍しいね？
……ふふ。どうも僕のよくない癖だけど……
君がここにいるだけで、何かが起きるんじゃないか――
そんなことを考えてしまうよ。

――ん？
僕かい？　僕がここにいるのは……
そうだな。きっと君と同じ理由なんじゃないかな。

直感、胸騒ぎ、虫の知らせ。
なんとも表現のしがたい感覚だけど……
どうしてか今日は、ツリーを見ておくべきじゃないか――って。
そんな風に思えたんだ。だからこうして、
延々と空の向こうへ続く、白き標を……見上げていたんだ。

けど――
どうやらその気持ちに従ったのは、良いことだったみたいだね。

どうしてって？　ふふ、決まってるじゃないか。
こうして、君に会うことができた。
それも、今日という【特別な一日】の始まりに。
それだけでも、素晴らしいことだと僕は思うよ。

…………。

……さて。
そろそろ部室に行くとしようか？
あまり長い時間僕たちが顔を出さないと、宗介がきっと泣いてしまう。
それと――特に、陽辺りが違う理由で泣いてしまうからね。

今日はどんな日になるんだろう？
僕や君。そして科学部の皆にとって……
いい日になれば、嬉しいよ。

沢野井から【今日、科学部は特別な一日を過ごす】、
との連絡があった貴女が、その日最初に出会ったのは――？
あ！　お姉さん、偶然じゃん！
って……この時間って、確かまだ学校あったよね？
なのに外にいるってことは――今日は、サボり？
あはは、お姉さんも中々のワルだね。

俺？
へへ、今日は俺、兄ちゃんが許してくれたから、
ひとりで土岐島の探索をしてたんだ～。

といっても、
これからすぐ兄ちゃんと合流するから、
今日の探索は駅前限定なんだけどね。

兄ちゃんの心配もよくわかるから、
あんまり長い時間とか、ワガママは言うつもりはないけど……
でも、やっぱりこんな風に自分で外に出て、歩いて――
なんでもないことかもしれないけど、すごく楽しいよ、俺。

……！　そうだ。
ねえ、お姉さん。お姉さんも今日、
沢野井さんの言う【特別な一日】のために、学校に戻るよね？
ならそれまでの間、俺と兄ちゃんと遊ばない？
兄ちゃんも絶対嬉しいと思うし――っていうか、俺が嬉しい！
だから、一緒に過ごしたいんだけど……ダメかな？

――！　ぃやった！！
それじゃあ、何して遊ぶ！？
プラモ屋……は俺と兄ちゃんばっかりが楽しいか。
お姉さんが喜ぶところ――……うーーーん！
いわゆる【デートスポット】ってやつか……！

くっ、勉強不足だった……！
けど、とりあえず――クレープでも食べよっか？