雅玖
「……すまない、ちょっと付き合ってくれないか?」
返事をする間もなく、雅玖さんに抱えられる。
渕田 結茉
「っ……!?」
気付いた時には、私は雅玖さんに抱えられたまま、木の枝の上に移動していた。
渕田 結茉
(この高さを跳んだの……!?)
あまりの高さに、頭がくらっとする。
私の動揺に気付いたのか、雅玖さんは私の体をしっかりと抱え直してくれた。
雅玖
「……心配するな。私を信じろ」
耳元でささやかれて、鼓動が跳ねる。
突然の出来事に私はただ、雅玖さんの言葉に黙ってうなずくことしかできなかった。
渕田 結茉
(あれって……妖怪?)
眼下に、妖怪の気配を感じると同時に、
私たちのいる木の前を何人かの妖怪が通り過ぎていく。
渕田 結茉
(ふぅ……)
雅玖
「……行ったようだな」