ルヲ
「なんだ。泳げないのかい、族長の息子さん」
フェイ
「なっ。ルヲじゃないんだから……別に、泳げないってわけじゃ」
ルヲ
「おっとこいつは聞き捨てならないな。誰が泳げないって?」
ルヲが、得意げに笑って上衣を脱ぎ始める。
すると、橋の上の方から歓声が上がった。
マツリカ村の娘1
「ルヲ、もしかして川を泳ぐの?」
ルヲ
「やあお嬢さん。実はそうなんだ。フェイと泳ぎ比べをする事になってね」
フェイ
「は!?」
ナーヤ
「え……!?」
マツリカ村の娘1
「みんないらっしゃいな! ルヲとフェイが泳ぎ比べをするって!」
マツリカ村の娘2
「本当? ルヲ、泳げるの?」
ルヲ
「ははっ、もちろんさ! 見ておいで、可憐なお嬢さんたち」
ルヲ
「さーて、どうするフェイ。逃げられなくなったぞ。オレ一人に、見せ場を譲るかい?」
フェイ
「お前なあ……」
はあ、とため息をついてフェイが額に手を当てる。
かと思うと、ルヲに負けじとフェイまで上衣を脱いでしまった。
フェイ
「いいよ。受けてやるよその勝負をさ」
ナーヤ
(フェイ、泳ぐのは苦手だって前に言ってたのに……!)
ナーヤ
「フェイ――」
止めようとした私を、フェイは手だけで制した。
そして得意げに、私に笑ってみせる。
フェイ
「心配ないよ、ナーヤ。俺だって昔よりかは泳げるようになってる」
ナーヤ
「でも……」
フェイ
「ルヲなんかに、負けるもんか」
ルヲ
「言ったな。なら、勝った方はお嬢さんの接吻を貰うってのはどうだ?」
フェイ
「は? お嬢さんって……」
ルヲ
「もちろん、ナーヤさ」
ナーヤ
「……私?」
フェイ
「はぁあっ!?」