- 燕來
-
「…………」
- 青凛
-
「わ。珍しい食べ物ですねえ。
ふふ、すごく美味しいです」
- ナーヤ
-
「え、ええ。美味しい、んですけれど……」
-
澄ました顔で、燕來さんは、すでに私と青凛さんの五倍以上の食事を一人で平らげていた。
次々と積み重ねられていくお皿に、私は自分の分を食べるのも忘れて、燕來さんをまじまじと見てしまう。
- 青凛
-
「こんな濃い味の料理を食べたのは初めてです。
これは何でしょう……?」
- 燕來
-
「そちらは、紅焼肉[ホンシャオロウ]。
豚の肉を甘く煮たものです」
- 燕來
-
「――おい。追加だ。菜包[ツァイパオ]と韭菜盒子[ジウツァイホーズ]と……」
- 燕來
-
「沙茶牛腩[シャーチャーニウナン]をもう二皿ずつ」
- ナーヤ
-
(まだ食べるの……!?)
- 街の料理店の店主
-
「へ、へいっ! ただいま!」
-
燕來さんの食欲には、店の人も驚いているようだった。
慌ただしく厨房へ向かい、しばらくして料理が届く。
それらを片っ端から、燕來さんは平らげていた。
- 青凛
-
「ふふ。いつ見ても良い食べっぷりですね」
-
青凛さんは見慣れているのか、いつも通りにこにことしながら、上品に料理を口に運んでいた。
小鳥のような量しか食べない青凛さんに、見た目にそぐわず大食漢な燕來さん。
燕來さんは、どちらかというと小柄な方だ。
この体のどこに料理が入るのかと思わずにはいられない。
- 燕來
-
「……食べないのか」
-
思わず箸を止めてしまった私に気がついて、燕來さんが一瞬顔を上げる。
慌てて、私は首を横に振った。