アスコット(後編)
五家会議のため全員がバーンスタイン邸の広間に揃うと、アスコットは並んだ顔ぶれをじっくりと観察した。
(エド君はいかにもシルフの血族らしい佇まいだ。纏う雰囲気はまだ青臭さがあるけれど、エドマンド卿と比べるのは酷か。らしいといえば、ライナ君のクー・シーらしさは年々際立ってきている。代々の当主と比べても、血と……因縁のようなものを強く感じるなあ)
続いてこの中では年長組にあたるアルフレッドとルーカスに目を移したアスコットは、つい口元に意地の悪い笑みが浮かびそうになる。
(ふふ、あからさまにお互い視線を合わせようとしないね。やはりあのことが尾を引いているのかな? そこまで気に病むぐらいなら徹底的に逆らってみせればよかったのに。……ま、この点についてはヒトのことを言えた立場ではないけれど)
全員を観察し終えたところで、アスコットは束の間目を閉じる。一瞬瞼の裏に、いつかの彼らが見えた気がして――
「皆さん、そろそろ始めても構いませんか?」
エドワードに呼びかけられて目を開けたアスコットは、紅い唇を笑みの形に歪めてみせた。
「もちろん構わないとも。皆、変わりないようで嬉しいよ」
(本当に変わらないね。お前たちも……俺も)
胸のうちに芽生えた皮肉めいた呟きは、胸に居座るかの相手に向けてさらに続いた。
(これがあなたの望みでしょう? 陛下)