エドワード(後編)

エドワードが駆け付けると、露店が並ぶ通りの一角で果物を積んだワゴンが倒れ中身が散乱していた。

「……物取りにやられましたか?」
「ああ、ワゴンを倒されてその隙に……って、あんたは――」

店主らしき男性にエドワードが話しかけると、彼はぎょっとしたように固まった。

「通りすがりの者です。片付けるのを手伝いましょう」
「いやいやいや! あんたあれだろ、あのバーンスタインの坊ちゃんだろ!? そんなおヒトに片付けなんてさせるわけには……」
「國を預かるバーンスタインの者だからこそ、手伝わせてください。果物を盗ったのはどのようなヒトだったのでしょうか」

エドワードが柔らかく尋ねると、とたんに男性は苦虫を嚙み潰したような顔になる。

「どんなも何も……ありゃあエデンに住み着いてる半混児ですよ。ったく、あんな奴らまとめて牢屋に放り込んじまえばいいのに……」

そう言って地面に転がった売り物を拾い集める男性に隠れ、エドワードは小さくため息をついた。

(これが今のローアン……いや、グランド・アルビオンの現状か)

被害を受けたとはいえ当たり前のように半混児全てを否定するような発言をする男性を、エドワードは責めることはせず――代わりに潰れたリンゴを手に取った。

「私に弁償させてください。この國に住む全てのヒトに対して責任を負うのが、貴族の務めですから」

(そう、全てのヒトだ。誰ひとりとして取りこぼしたくはない)

顔を上げたエドワードの視線の先には、エデンへと続く通りが見えていた。