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箒と塵取りを手にした私は、どう見ても案内役のメイドではない。
にもかかわらず、アスコットは私の前で足を止めた。
- アスコット
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「こんにちは、美しいお嬢さん」
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そう言って私の顔を覗き込もうとした彼の瞳の色は赤とも紫とも見え、ヒトを惑わすような怪しい魅力を放っていたけれど。
- ローズ
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(急に、色が濃くなった?)
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ふいに違和感を覚え、目を瞬く。すると――
- アスコット
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「っ――!?」
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アスコットは何かに弾かれたように、身を起こした。
- アスコット
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「……なるほど。美しい花には棘が隠されていたか」
- ローズ
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(……このヒトは、何を言っているの)
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彼の言動に不審なものしか感じず、じりじりと後ずさる。失礼になるのを承知で逃げようかと考えていると。
それよりも早く、伸びてきたアスコットの手に捕まえられてしまった。
- ローズ
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(! 油断した。
まさか、彼も私を不審に思って……?)
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アスコットの口元には相変わらず微笑みが浮かんでいたが、瞳は妙に熱っぽく、探るように私を見つめてくる。
次に何を言われるのかと身を固くしていると、アスコットはふわりと私の手を持ち上げた。