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- ???
- 「……何してるの。そのままだと着物が濡れちゃうよ?」
- 疑問に思いながらも視線を上へ向けてみると、そこには見覚えのない男性が立っていた。
- 紗乃
- (………………え? 誰?)
- 紗乃
- (こんな人、麓の村にいなかったよね?)
- 紗乃
- (身なりもすごくしっかりしているし、刀を下げているところからするとお侍さん……なのかな?)
- 紗乃
- (……あれ? しかもこの人、『糸』がない……?)
- 紗乃
- (なんだろう、不思議な人。それになんだか――)
- 目が、離せない。
白一色の世界に溶け込んでしまいそうな、色素の薄い髪と肌。
そして硝子玉のように輝く瞳……。
初めて見たはずなのに、ここにいるのが当たり前だと思えてしまう『何か』がその人にはあった。
この心がざわざわするような感覚は、多分――。
- ???
- 「…………懐かしい」
- 紗乃
- (え?)
- ???
- 「あれ? なんで僕『懐かしい』なんて……」
- ――驚いた。その感想は、まさに私自身も思っていたことだった。
自分の心を読まれたかのように指摘されて、私は無性にどきどきしてしまう。
- ???
- 「まぁいいか。
それよりずっと座り込んでいるけど、もしかして具合が悪いの?」
- 紗乃
- 「あっ……! ご、ごめんなさい!」
- 紗乃
- (いけない! 無視したみたいになっちゃった……!)
- そこで私は、男性が差し出してくれていた手を慌てて握ってみる。
するとその人は、私のことを優しく引っ張り上げてくれた――。