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10周年記念SS
『十周年をお祝いしよう!』

関定
今日集まってもらったのは他でもない、オレたちが出てるゲーム『十三支演義』が十周年を迎えたぞ! いえ~い! ふううう~!!
蘇双
パチパチパチ~
劉備
なんだか久しぶりだね。前もこうして集まったことなかったっけ?
張飛
あったあった! なんか関定たちがぐいぐい進めてくヤツな!
諸葛亮
はあ……それでまた曹操たちもいるのか
曹操
今度こそ関羽に会わせてもらおう
張遼
あの方にお会いできるなんて嬉しいです
夏侯惇
……
蘇双
夏侯惇はもう諦め顔だね
関定
ここに来た時の曹操って、いつも以上にヤバイもんな
諸葛亮
そう思うなら呼ぶな
周瑜
えー、せっかく来たのに中止か? オレ、楽しみにして来たんだけど
趙雲
しかし今回は祝い事だろう? ひとまず進めていいんじゃないか?
周瑜
だよな。招待状まで用意してくれてたし、ここは派手にいこうぜ
張飛
あ、招待状と言えば! 『十周年なので祝いの品も持参』ってあったけど、アレなんだよ
蘇双
そのままの意味だよ。ちゃんと『関羽に渡すので』って書いてたでしょ?
関定
そう! 今回は十周年にかけて、ヒロインの関羽に贈る十個のプレゼントを持ち寄ろうって企画です!
劉備
そっか。ここには十人いるし、ちょうどいいね
蘇双
と言ってもボクたちは、その他代表ってことで料理とケーキを準備してるだけですよ
夏侯惇
けーき? そういえば以前も見たな
趙雲
なるほど、それを食べて皆で祝うんだな。そして関羽には、俺たちの贈り物で喜んでもらうと
関定
そうそう、そんな感じ。誰の贈り物が関羽に一番刺さるのか、そこもお楽しみってことで
曹操
愚問だな。私の物に決まっているだろう
劉備
曹操はすごく自信がありそうだね
張遼
そういえば、最近の曹操殿は連日遅くまで何かされていました。もしやこのために?
周瑜
うわぁ……
夏侯惇
そ、曹操様……
関定
はい! 夏侯惇までドン引きしたところでサクサク行きましょう! まずは誰から発表する?
張飛
はいはーい、じゃあオレから! 姉貴ならぜってー喜んでくれるモン、持ってきたぜ!
諸葛亮
その発言がすでに怪しいな
蘇双
完全なフラグだよ
趙雲
ふらぐ?
張飛
いいから黙って見てみろ! オレの贈り物は……コレだ!!
張遼
おや、綺麗な花束ですね
張飛
だろだろ? 姉貴は花が好きだからさ、山に行ってたくさん摘んできたんだ!
諸葛亮
普通だな
張飛
え?
周瑜
ひねりはないよなー
夏侯惇
ありきたり、と言うやつか
曹操
凡庸だな
張飛
うぐ……っ、けどそれなら喜んでくれる可能性だって高いだろ! な、劉備?
劉備
え? あ、うん……
蘇双
劉備様? どうされたんです?
趙雲
ん? なにか背中に隠してるようだが
劉備
あ……実はその、僕も用意したのが花束だったんだ
諸葛亮
周瑜
あーあ、いいのかよ諸葛亮。さっきの発言
諸葛亮
うるさい黙れ
周瑜
ぎゃん!
諸葛亮
違うんです劉備様。決して花が悪いのではなく、要は贈る者によるという意味であって張飛は日頃の行いが――
夏侯惇
すごく早口だな
張遼
私はどちらも素敵だと思いますよ
趙雲
ああ。同じ花束と言っても種類が違うし、個性も出ている
劉備
だといいんだけど。この花はずっと西にある国から渡来したんだって。大きな花弁が珍しくてとても綺麗だったから選んでみたんだ
張遼
なるほど。たしかに見たことのない花です
蘇双
劉備様は珍しくて豪華な花、張飛は野山の小さな花……
夏侯惇
どうしても小さい方が見劣りするな
張飛
うわ~ん! なんだよみんなして!
張遼
大丈夫ですよ、張飛さん。どちらも綺麗ですし、大きさが違うのならまとめてみると互いを引き立て合ってくれるのでは? ほら、こうして……
張飛
え、ちょ
周瑜
うわ、完全に張飛の花が引き立て役だな
張飛
くそおおお~! ちょっともっかい考えてくる!
関定
やり直しは反則です! それに、他の贈り物も似たり寄ったりかもだろ?
蘇双
あ、それはたしかに
夏侯惇
! おい、なぜ俺を見る
関定
そりゃあ、女の子に贈り物なんてしそうにないから?
夏侯惇
ふん、馬鹿にしているのか? お、贈り物くらい……
周瑜
したことないって顔だな
夏侯惇
うるさい! 奴に贈る物など、これで十分だろう!
劉備
ええと、それは……
諸葛亮
兵法書ですね
張飛
へいほうしょ~? なんだ、オレよりひどくね?
夏侯惇
な!?
張遼
夏侯惇殿らしいですが、関羽さんは読むのでしょうか?
趙雲
少なくとも、俺は読んでいる姿を見たことはないな
夏侯惇
なんだと!? 武人なら必須の書だぞ?
劉備
彼女は強いけど、戦が好きなわけじゃないから
張飛
つーか、そんな難しいの読むのオレたちの周りじゃ諸葛亮くらいじゃね?
諸葛亮
たしかにお前には難しいだろうな
張飛
いちいちひどい!
周瑜
なんにせよ、これはないよな。女心がわかってない
曹操
そうだな
夏侯惇
そ、曹操様!? くっ……兵法書の何が悪いというんだ!
関定
うーん、これは結構ヤバ……おもしろい品揃えになりそうだな
蘇双
はっきりヤバイって言えばいいのに
周瑜
あ、なら次はオレが出すか? ちゃーんと女の子受けする物、持ってきたからさ。じゃじゃーん!
諸葛亮
ほう、豪勢な衣装だな
劉備
すごく綺麗だね
周瑜
ふふん、これは最高級の絹で出来てるんだぜ。しかも金の刺繍付き!
張遼
本当ですね……この手触りの良さは、とても良い物かと
周瑜
そうなんだよ。だから抱き心も最高でさ。これを着た関羽の肩を抱いて、そのまま『男が服を贈る意味、知ってるか?』って囁けば――
諸葛亮
やめろ。劉備様の前だ
周瑜
ぐはあっ!! 諸葛亮……一度ならず二度までも……!
張飛
けど周瑜! 今のはダメだろ!
趙雲
ああ。あいつが嫌がることを強いるなら黙っていないぞ
張遼
関羽さんは嫌なのですか? それは看過できません
曹操
そういった下心は透けて見えるものだ、やめておけ
周瑜
なんだよ、みんなして! 特に曹操、アンタは同じようなこと考えるクチだろ!
曹操
なんのことか分からぬな
蘇双
あ、しれっと流した
張遼
あの……先ほど『男性が服を贈ることには意味がある』とおっしゃっていましたが、装飾品はどうなんでしょうか?
劉備
装飾品? うーん、特に聞いたことはないかな
夏侯惇
なんだ、張遼。はっきり言え
張遼
周瑜さんの贈り物を見て、私も失礼な物を用意してないかと不安になってしまって……
周瑜
え、オレけなされてる?
関定
じゃあ、確認がてら次は張遼に披露してもらいましょう!
張遼
私が用意したものは、これです
諸葛亮
張遼は髪飾りか
張遼
色々と悩んでいたら町の商人の方が相談に乗ってくださったんです。関羽さんのことを思い浮かべながら選んだので、きっとお似合いになるかと
劉備
派手過ぎなくて、彼女も好きそうだね
趙雲
あいつはあまり着飾ろうとしないが、これは気に入りそうだ
張遼
それなら良かったです。私は関羽さんが喜んでくだされば十分ですから
蘇双
純粋な目がまぶしいね。周瑜の後だと余計に
周瑜
うるせー
夏侯惇
ふん、豪奢な衣装に髪飾りなど動きにくいだけだろう
曹操
夏侯惇はわかっていないな
夏侯惇
え?
張飛
戦バカだもんなー
諸葛亮
兵法書……
夏侯惇
くっ、黙れ!
関定
わあああ、ちょっと待って! 油断するとすぐこうなるんだから!
蘇双
ええと、あとは趙雲と曹操、諸葛亮だね。趙雲が一番安心だけど、精神衛生上、最後まで取っておきたい気も……
趙雲
俺? 俺は張遼たちのように着飾るものではないが、関羽のことを想って用意したぞ。ほら
劉備
え? これは……
周瑜
関羽の木像!?
張飛
ホントだ! すごくね!?
趙雲
そんなに驚くものか? そこまで出来は良くないかもしれないが
関定
いやいや、出来の問題じゃないって! ていうか上手いし
趙雲
剣とは違うが、刃物を使って作るだろう? そのおかげか何とか形にできたんだ
夏侯惇
才能の無駄遣いだな
諸葛亮
だが、なぜ木像……
趙雲
あいつのことを考えていたら、想いが募ってきてしまって。詩を贈ることも考えたが、あまり自信がなくて木像に落ち着いた
張遼
なるほど、お気持ちわかります
劉備
え? わかるの?
曹操
木像の関羽……
関定
穴が開くほど見てるんだけど……曹操、もしかして欲しいとか?
張遼
できることなら私も欲しいです
諸葛亮
理解に苦しむ感覚だな
蘇双
関羽はどこ飾るんだろ。っていうか喜ぶかな?
関定
しっ! それは言わないであげて!
趙雲
あまり反応が良くないな。一緒に用意した、手荒れに効く軟膏も駄目だろうか
関定
前言撤回。やっぱ趙雲さすがだな! さすが趙雲!
蘇双
そういう気遣いできるところは完璧だよね。天然だけど
夏侯惇
なにも理解できん……
張飛
もー、なんだよ。結局みんなイイモン準備してるじゃん!
劉備
あと残りは……諸葛亮と曹操だね
諸葛亮
大したものは用意していませんよ。私のはただの鍋です
張遼
鍋……ですか?
周瑜
いくらなんでもそれはないだろ
趙雲
何か理由があるんじゃないか?
曹操
鍋に理由? そんなものあるわけが……
劉備
あ、そういえばこの間、関羽が使い慣れた鍋が壊れたって言ってたよ。もしかして、その代わりとか?
諸葛亮
……修理したいと言ってきたのですが、新品を用意した方が早かったので
関定
つ、ツンデレきたー!!
夏侯惇
つんでれ?
張飛
なんだよそれ! 地味なの選んだと思ったら株が上がるヤツじゃん!
周瑜
くそっ、さすが軍師……考えるじゃないか
諸葛亮
やめろ。逆に馬鹿にされてる気がする
周瑜
なんでだよ、褒めてんのに!
張遼
ですが、関羽さんのことをよくわかっているようで羨ましいです。私も見習わなければ
趙雲
ああ。ああ見えて軍師殿は、いつもあいつのことを気にかけているからな
諸葛亮
…………
関定
お、黙り込んだ
諸葛亮
うるさい
関定
ぎゃっ! オレまでぶたれた~!
曹操
ふん、ここまで長々とやってきたがもういいだろう。最後は私の番だ
蘇双
いきなりドヤ顔だね
曹操
他の者たちの品を見て、私が一番だと確信したからな。ふっ、満を持して発表させてもらおう
張飛
うわ、なんか怖くね?
諸葛亮
嫌な予感しかしないな
夏侯惇
曹操様……
関定
夏侯惇も不安そうですが、ここは一応聞かないといけません。ええと……曹操からの贈り物は?
曹操
私の贈り物は……城だ!
夏侯惇
え!
諸葛亮
は?
劉備
城って……どこの?
曹操
ここから三里ほど行った先にあるものだ。もともと別邸だったのを、関羽に合うよう改築した
趙雲
改築?
曹操
女が好むような内装に変え、私と共に過ごすための十分な広さも確保した。もし他の地が良いと言うなら別の城でも構わないが
張遼
なるほど。それで先日から忙しくされていたのですね
曹操
わかっただろう? ここにいる誰よりも私は本気だ。関羽への愛も、私が一番深く大きいということが証明されたも同然!
張飛
いやいや! 城とか規模がおかしいって!
周瑜
だよな、囲う気満々だ
夏侯惇
か、囲う!?
劉備
それは聞き捨てならないね。関羽はどこにも行かせないよ
趙雲
ああ。あいつのことは俺たちが守る
曹操
ほう、私を止める気か。ならば致し方あるまい
関定
え、ちょ! ここで刃傷沙汰は……
曹操
かくなる上は関羽に直接、想いを伝えよう。ふふふ……こうなることも考え、私はすでに手紙をしたためているからな!
蘇双
うわ、すごく分厚い束が出てきたんだけど
曹操
私の想いが一言ですむわけがないだろう。待っていろ、関羽……!
夏侯惇
曹操様!? お、お待ちください!
張遼
お気持ちを伝えにいくのなら私も同行します
張飛
行こうぜ、劉備。姉貴が危ねぇ!
劉備
うん、そうだね
趙雲
俺も行こう。祝い事を台無しにさせるわけにはいかない
周瑜
やれやれ、結局最後はバタバタかよ。ほら、諸葛亮も行くぞ!
諸葛亮
! おい、周瑜。引っ張るな……っ
蘇双
あー……前もこんな展開なかった?
関定
あはは……十年もやってたら、こういうことも多くなってくるよな!
蘇双
笑っても誤魔化せてないし。もういいよ、さっさと締めよう。ボクたちも追いかけなきゃ
関定
だな。……ってことで『十三支演義』は十周年を迎えました! こうして長く続けられてきたのも皆さんのおかげです!
蘇双
本当にありがとうございます。これからもよろしくね!

おわり

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