うっ、うぅ……ぐすっ。
みんなひどいよ……俺のこと仲間はずれにして……。
……おい、アイツさっきからずっとあの調子だぞ。
まぁ無理もありません。
前回、彼には本当に申し訳ないことをしました。
……心にもないことを。
まさか、みんなアレンのことを忘れちゃってたなんてね。
でも今回は呼ばれてよかったじゃない。
べつに前回だって、そんなに楽しいもんじゃなかったぜ。
むしろ呼ばれなくて正解だったんじゃねーの?
たしかに、あれを楽しいと感じるかどうかはひとによるでしょうね。
特に、槍玉に挙げられたアダマスとルーにとっては。
おい、俺を侮辱しているのか?
…………お前ら……いつも勝手なんだよ!
俺だって彼女の話をしたかったのに!!
絶対に許さないからな!!
うぉ、キレやがった!
しかも、俺の知らないところで彼女にあんなことをしてたなんて……!!
俺なら……俺なら彼女が嫌がることなんて絶対にしないのに……。
あんなふうに困らせて……無理やりあんなことするなんて
彼女がかわいそうだ……う、うぅ……。
また泣き出した。
あーあ、めんどくさいなぁ、もう。
言っておきますが、彼女は別に嫌がっていませんでしたよ。
いや、むしろ……。
そうだ! テメー、ずいぶん好き勝手やってくれたみたいじゃねーか!!
おや。積極的に攻めるのは、べつにきみの専売特許ではなかったはずですが。
要するにボクたちを見くびってたってことでしょ?
だから今さら焦ってるんだよね。
べつに焦ってねーし!!
サフィ、オマエだってガキなのを利用してあんなことしやがって!
ガキって言われるのはムカつくけど、
ま、おかげでお姉さんの警戒が甘いのは確かだよね。
それぞれが自分の強みを活かして彼女にアプローチする。
至って真っ当な競い合いだと思いますが?
フン。開き直って取り繕ったところで、その下劣さは隠せはしないがな。
おや、言いますね。
お姉さんってさ、純情そうなのに意外にやらしー顔するんだよね。
ホント、男を煽るのがうまいんだから。
かわいかったなぁ、あのときのお姉さん。
……お姉さんが途中で寝ちゃわなかったら、ボク、羽目を外しちゃってたかも。
サフィ! 羽目を外すって、彼女になにをしたんだよ!?
したんじゃなくて、しそうになっただけだってば。
どんなことかは、こんなところじゃとても口に出せないけど。
口に出せないって……っ!
コイツはなぁ、アイツに膝枕させやがったんだよ!
それどころか、そのあとアイツの手をとって爪を……。
黙れ! だまれだまれ、黙れーっ!!
……落ち着けアレン。
もうすんだことに心かき乱されても、なんの意味もない。
ふふ、まるで自分に言い聞かせているような口ぶりですね。
それで俺を挑発しているつもりなら貴様の程度が知れるな。
それにその回りくどいやり口、あの女に対しての口説き方と同じで虫唾が走る。
それ、わかるかも。
エメルってねちっこいよね。
あー、たしかに。
僕はただ、常に彼女のために尽くしているだけですよ。
一見回りくどく思える行動や言動も、彼女のためを思えばこそです。
書庫の奥に誘い込んだのもお姉さんのため?
アイツに強引に迫ったのも、アイツのためだってのかよ?
ええ、もちろん。彼女は無用心すぎますから。
男に対する警戒心を植えつけるために、あえてです。
……しかし、彼女の怯えた表情はとてもそそられました。
僕の理性を試されているのかと思いましたよ。
ケッ、勝手な屁理屈こねやがって。
警戒が必要なのはオマエじゃねーか。
フフ、否定はしませんよ。
もし僕が無害な男なら、彼女に対してあんな劣情を抱くこともないでしょうし。
……っ!
そもそも、この場に無害な男などいるのですか?
我々宝石のだれもが、彼女に選ばれるために手を尽くしているかと思いましたが。
たとえおもてだった行動はなくとも……ね。
……黙れ、若年寄。
……それ、僕のことですか。
ハハッ! 若年寄とかって、まんまエメルじゃねーか!
よかったじゃない。いいあだ名つけてもらえて。
…………。
おい、どうしたんだよアレン?
……なんだよ、みんな好き勝手して……!
彼女の肌のぬくもりを知ってるのは、俺だけだと思ってたのに!!
え?
あ!?
……なに?
それは聞き捨てなりませんね。
もういい! 彼女のところに行ってくる。
目が覚めたときに俺がそばにいてあげるんだ。
ちょ、待てよ! おい!
あーあ、行っちゃった。……今のどういう意味だと思う?
もしや……つぎの「シチュエーションドラマCD」の内容に関わりがあるのでは?
気になるのなら、追いかけて聞けばいいだろう。
アダマスこそ行ったら?
なんかそわそわしてるみたいだけど。
あの女とのことなどに興味はない。
……俺は自分の部屋に帰る。
あっ、アダマスてめぇ!
ホントはアイツんとこ行きたいだけだろ!
ふふっ、アダマスったら素直じゃないなぁ。
アレンがお姉さんになにしたのか、本当は気になって仕方ないくせに。
まあ、その点ボクらは自分の気持ちに素直だから……って、あれ? エメル?
うわぁ、信じらんない!
ボクだけ置いていかれるなんてありえないんだけど!
ああもう、ちょっと待ってよー!!