前から思ってたんだけどさ、アダマスとルーって残念だよね。
あ? いきなりなに言い出してんだよ。
だから、いいとこまでいってるのに詰めが甘いって言ってるの。
まあ、その方がボクにとっては都合がいいけど。
なんの話だ。
とぼけないでよ。ルーがお姉さんをいじめて逃げられたのも。
なっ!
ルーから逃げてきたお姉さんをアダマスがかくまって、
いろいろしたのも全部お見通しってこと。
っ! ……覚えがないな。
しらばっくれちゃって。
ってか、なんでんなことオマエが知ってんだよ!
それにあいつに逃げられたのは前のことで、その後はちゃんと……っ
ええ。ちゃんと優しくした上で、なにやらいかがわしい行為をしていたようですね?
いかがわしくねーよ! だああっ、オレらのプライバシーはどーなってんだ!!
プライバシーなど、あってないようなものだと思いますよ。
むしろ多くの姫君たちに筒抜けかと。
……どういうことだ。
あれ、ふたりとも知らないんだ?
なんでも「シチュエーションドラマCD」というもので、
広く世にあなたたちの所業が暴露されているとか。
どらま……しーでぃー?
ボクたち、城主に聞かせてもらったんだ。
ここで内容をわかりやすく説明してほしい、ってことで。
しかしどうやら……なにかの手違いで、きみたちには話がいっていなかったようですね。
フン、手違いだと? どうせおまえたちが故意に伝えなかっただけだろう。
やれやれ、人聞きの悪い。被害妄想はよくないですよ。
こんの腹黒野郎ぉ~……!
だいたい、オレがあいつをいじめたとか言う方が人聞き悪いじゃねーか!
おや、それは事実でしょう? だからアダマスが彼女を保護したわけですし。
アダマスも役得だったよねぇ。
ぜんぜん興味ないみたいな顔してるけど、本当はラッキーとか思ってたんじゃないの?
……勝手に言っていろ。あの女など、おまえたちで好きにすればいい。
きみの行動を客観的に見れば、とてもそれが本心とは思えませんが。
自分を偽ってばかりいると、いつか後悔することになりますよ。
フン、己を偽っているのはおまえの方だろう。
おや、おかしなことを言いますね。僕はあくまでも本心に忠実ですよ?
そうでなければ、暗い書庫で彼女とふたりきりになったとき、あんなことはしません。
……あんなこと?
へぇ、聞き捨てならないね。
今でも鮮明に覚えていますよ。彼女の細い腰、震える吐息……。
なっ? おいエメル! テメーあのオンナになにしやがった!?
澄ました顔して、このムッツリ野郎が!!
ムッツリというのなら、それはきみの方じゃありませんか?
僕の記憶が確かなら、きみは寝ている彼女の横でなにやら妄想に耽っていたような。
っんなとこまで聞いてやがったのかよ!
あれはアイツの目が覚めたらなにしてやろうか、
前もって考えてただけだっての。
……それを妄想と言わずしてなにを妄想と言うのやら。
でもさ、ルーはよくなにもせずにいられたよね。
ボクだったらお姉さんの隣で添い寝しちゃうな……まあ、
この前実際にそうしちゃったわけだけど。
あぁ!? ……このクソガキ! なにマセた真似してんだ!
起きたときのお姉さんの反応、可愛かったなぁ。ウブだよね、本当。
チッ……あの女、思っていた以上に無防備なようだな。
しかしたしかに不思議ですね。
彼女が逃げ出すほどのことをしでかしたルーが、今回はなにもせずにいたなんて。
……そりゃ、オレなりに反省したんだよ。
この前はやりすぎたからな。
ルー、お姉さんになにしたわけ?
…………
…………
…………
お、おい。なんだよおまえら! ちょっとからかっただけだろ?
さっきから殺気がハンパねーんだよ!
おや、駄洒落ですか。
ちっげーよ!!
……ところで、そのドラマCDとやらにはおまえたちは出ていないのか。
ボクらが出るのは次みたい。
それで最後がアレンと宝石大集合! みたいな感じって聞いてるけど。
では、きっちり聞かせてもらうとしよう。
そーだ! やられたらやり返してやるぜ!!
ルーが言うと、なぜだか幼稚な感じがしますね。
実際に幼稚なんじゃないの? おつむが。
ぬあぁ~っ! おまえら、いいかげんにしやがれ!!
このままじゃオレの好感度だだ下がりだろーが! どーしてくれんだよ!
大丈夫。ちゃーんとフォローしてあげるから。
えーと、ルーも甘いこと言ってたよね?
そうですね。
アダマスよりむしろルーの方が甘さを味わったというか……ああ、考えただけで殺意が湧いてきました。
俺よりも、だと……?
あー、なんかボクもムカついてきちゃった。
……おい、それでフォロー終わりか? 雑すぎねぇか!?
…………ルー。
あ? な、なんだよ。
少し話がある。こちらへ来い。
おまえ、なんかさっきよりも殺気がすごいことになってないか?
あ、また駄洒落?
だから駄洒落じゃねーし!
安心しろ。すぐにとどめを刺してやる。
やってられるか! オレは部屋に帰るぜ!
待て。無事に帰れると思うなよ?
ふたりとも行っちゃった。
うーん、こんな感じでよかったのかな?
ええ、城主への義理は果たしました。
きっと、姫君たちにもお楽しみいただけたことでしょう。
だといいんだけど。
いいんですよ。どのみち、こんなところで良さをすべて伝えきれるものでもありません。
それに、僕たちが実際になにをしたのかは、また次のお話ですから。
実際に聞いて確かめてってこと? うわー、えげつなーい。
おや、僕はそこまであからさまなことは言っていませんよ。
……さて、僕たちも行きましょうか。ルーにはまだまだ聞きたいことがありますし。
まだ生きてればいいけど。