テオ
「じゃあなんで水着つけてるの?」
凪咲
「……っ」
ぐうの音も出なかった。顔にさっと血が集まるのを感じる。
私にできるのは顔を逸らして、本心を悟られないようにすることだけだった。
テオ
「……そういうの期待してくれてるなら、言ってくれればいいのに」
凪咲
「えっ?」
テオが、さらに体を寄せてくる。
濡れたまつ毛が色っぽく揺れた。
見たことのない、獰猛で好色な笑みだった。
テオ
「……僕なら何もしないと思った?」
手首を掴まれ壁に縫い留められる。
いつもとは違う、強引なアプローチ。
このままじゃ私……。
凪咲
「そ、そんな期待なんてしてない……!」
必死に、声を絞り出す。
混乱して、自分の本心すらわからずただ闇雲に否定の言葉をひねり出した。
テオ
「あ、そうなんだ」
凪咲
「へ?」
急に、テオの拘束が弱まる。
先ほどまでの獰猛な顔は鳴りを潜め、いつもの穏やかな表情へと戻っていた。