しばらく行くと、道がぬかるんでいる場所に出た。
凪咲
(あ、このまま行ったら汚れちゃいそう……)
凪咲
(……まぁでも、帰ったらお風呂に入ればいいか)
大して気にせずに、そのまま進もうとすると――
テオ
「クイーン、待って」
凪咲
「え? ――わっ!」
振り返ると同時に、ふわりと身体が浮いて……。
気が付けば、テオに抱き上げられていた。
凪咲
「あ、あの……テオ、どうして……?」
テオ
「そのままじゃ汚れちゃうから」
自分が汚れるのは気にならないのか、テオは私を抱いたまま、構うことなくぬかるみを進み始めた。
凪咲
「お、重くない?」
テオ
「まあ、それなりに」
凪咲
(正直者!)
照れと申し訳なさで寄ってしまった眉を見てテオが小さく笑った。
テオ
「……重くないって言って欲しいの?」
凪咲
「そうじゃないけど……」
いつもより近い距離がなんとなく落ち着かなくて、私はなんとか話題を探す。
凪咲
「テオ、力持ちなんだね」
テオ
「これくらい普通だよ。むしろ僕は筋力ない方だし」
テオ
「……ミロやイーノの方が……僕よりずっと強い」
凪咲
(テオが言うなら、そうなのかも知れないけど……)
凪咲
「でも、私からしてみればテオも十分すごいよ。
っていうか、人間基準で考えるとテオもすごく強いし力持ちだから!」
テオ
「…………」
凪咲
(……あれ、何か気に障ること言っちゃったかな?)
黙ったままのテオの様子に不安になっていると、彼は私を抱き直すようにグンと身体を揺すった。
凪咲
「わっ……!」
テオ
「……ちゃんとつかまってないと落ちるよ」
凪咲
「う、うん……!」