- 凪咲
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「……似合うなぁ」
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たくさんの花びらに囲まれているアルヴィンを前に、思わずため息まじりの呟きが漏れた。
高貴な雰囲気を纏っている彼が、たくさんの花に囲まれている光景はとても優雅で、綺麗。
- アルヴィン
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「なんだ?」
- 凪咲
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「え、あ!? ……その、アルヴィンと、花が。 似合うなぁと思って」
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言いながら、私はみるみる頬が熱くなっていく。
- 凪咲
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(真顔で聞かれると照れる……!)
- アルヴィン
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「…………」
- 凪咲
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(しかも何も言わないし!!)
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アルヴィンと並んでお湯に浸かる恥ずかしさも相まっていい加減のぼせてしまいそうだと感じる。
- 凪咲
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(そろそろ出た方がいいかもしれない……)
- アルヴィン
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「花は……」
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不意に、アルヴィンがぽつりと呟きを漏らした。
- 凪咲
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「え?」
- アルヴィン
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「花は、私よりあなたの方が似合う」
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言われてからハッと気づく。お湯に浮かんだ花びらが私の方に集まってきていた。
彼はゆらゆらと水面を波立たせ、尻尾で花びらを私の方へ寄せていく。相も変わらず無表情のままで。
- 凪咲
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(今、似合うって……)
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ちょっとした気まぐれ、些細な仕草かもしれない。
それでも、ゆったりと揺れる尻尾は嘘をつかない。
私はたくさんの花びらに囲まれていき、頬がますます火照っていった。
- アルヴィン
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「……」
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小さく、彼が笑ったような気配を感じた。気配だけ。表情が変わった様子はない。
- 凪咲
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(こんなの……)
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気のせいかもしれないが、彼の放つ雰囲気と湯気にあてられ目が眩んでいく。