ミロ
「たまには水浴びじゃなくて、 こういうのも悪くねえな」
湯船に浸かったミロは、当然のように私を抱きしめる。お湯と水着で隔てられているのに、ミロの存在が直に感じられてしまう。
凪咲
「そ、その……ちょっと、近いよ……。 裸だし……」
ミロ
「あ? この水着ってのをつけてるからいいんだろ? それに、海にだって行っただろうが」
凪咲
「そうだけど! そういう問題じゃなくてぇ……」
言葉に力がこもらない。私だってさっきまでは水着を着てるから問題ないと思っていたのだ。
ミロ
「なんで裸は照れるのに、こんな薄いの1枚つけてれば問題ねえんだ? 人間ってのは不思議だな」
凪咲
「ん……ちょっと、あんまり触らないで。 水着、脱げちゃうから」
ミロ
「窮屈だろ、脱いじまえば?」
ミロが、獰猛な笑みを浮かべる。今この場において間違いなくミロは捕食者で――そして私は獲物だった。
ミロ
「お前がいいって言えば……。 今、ここで。番に――」
凪咲
「ダ、ダメ!!」
思わず大きな声が出た。ミロのほっぺに、手を当てる。意味なんてなかった。とにかく必死だった。
ミロ
「……イヤか?」
凪咲
「イヤとかそう言うのじゃなくて、とにかくダメです! 番になるっていうのはそう言うことなんです!」
理屈になってない。そんなことはわかっている。私にはもう、勢いで押し切るしか手段が残されていなかった。
ミロ
「……ちぇ」