闇の中からそれは現れた。
それは少女の姿をしていた。
歳の頃は十に届くかどうか。
大きな青い目が、もの問いたげにこちらを眺めていた。
そこには、どこか、人を超えた何かがあるような気がして。
私は、少女の姿をした何か別の生き物だと思った。
その少女が、汚れがなさ過ぎるように感じたから。
薄闇の中でなお、彼女は清廉な雰囲気を持っている。
彼女が、見た目どおりの普通の人間であるはずもなかった。
常人が幾重にも張り巡らされた結界を突破して、こんなところに現れるはずがなかったし、
私たちを見わたす視線にある、その気品は【聖なる】という言葉がすごく、当てはまる。
私は不意に気づく。
この少女には、聖女という言葉が、よく似合うと。
周囲を見回して、その少女は実に退屈そうに言った。