- トゥクトゥクは、そこまでスピードがないおかげで島の中の綺麗な景色が、乗っているとよく見えた。
ゴトゴトと穏やかに走る車内から、身を乗り出して周囲を見ていく。
頬を撫でる風が、心地よかった。
- ヒロイン
- 「わあ……!
見て見て、シェルビー!
海がここからも見えるわ!」
- シェルビー・スネイル
- 「海なら、さっき船の上からも見ただろう」
- ヒロイン
- 「でも全然景色が違うもの!
綺麗……!」
- 普段暮らしていて、あんまり海岸の方へは行かない。
それに島から見る海は新鮮で、ついはしゃいでしまう。
トゥクトゥクは、ダムール・パラディ内の名所をゆっくりと巡っていってくれた。
たくさん並ぶ屋台に、ショーホールに、立派なレストラン。
計算して開発されたリゾート地だけあってダムール・パラディは見どころが満載だった。
- ヒロイン
- 「見て、シェルビー!
今そこにミントチョコレート味のポップコーンが売ってるお店があったわ」
- シェルビー・スネイル
- 「……ああ、そうだな。
後で食べてみるか?」
- ヒロイン
- 「ええ!」
- シェルビー・スネイル
- 「っ……。その顔は、反則だ……」
- ヒロイン
- 「え?」
- シェルビー・スネイル
- 「いや……。
ここでなら、構わない、か……。
他に、誰も見ていないしな……」
- ヒロイン
- 「? どうしたの?」
- シェルビー・スネイル
- 「その……はしゃいでいるお前があまりにも可愛いからな。
……こうしたく、なったんだ」
- シェルビーが、私の腰を抱き寄せる。
そして、ハットをめくり上げそっとこめかみにキスをした。
- ヒロイン
- (わっ……)
- こめかみとはいえ、外で彼がキスをするなんて珍しい。
ここでなら、と小声で言っていた。
トゥクトゥクに乗ってる今なら許されると思ってキスをしたのかもしれない。
顔からは分からないけれど、どうやらシェルビーも、私と同じぐらいはしゃいでいるようだった。
――やっぱり、ハネムーンは特別だ。
- シェルビー・スネイル
- 「……見てみろ。
あちらの景色も見事だ」
- 私の名前を呼んで、嬉しそうに彼が私の髪を撫でていく。
- ヒロイン
- (ふふっ、シェルビーも楽しそう)
- 島に到着してしばらくは、仕事モードが抜けていなかったけれど、今は純粋に楽しんでいるように見える。
このダムール・パラディには仕事人間も寛がせてしまう魔力があるようだった。