- ヒロイン
- 「おはよう、シェルビー」
- シェルビー・スネイル
- 「今日もお前は早起きだな」
- シェルビー・スネイル
- 「おはよう」
- シェルビーの手が伸びてきて、顔を引き寄せられて、そのまま唇が重なる。
――シェルビーと結婚式を挙げてから、もう2週間が経っていた。
仕事の内容に合わせて、8番街の家と1番街の家を行き来して暮らしている。
私は今、ブライダルアドバイザーではなく社長秘書というポジションで、シェルビーのサポートをしていた。
お互い、仕事で忙しいながらにも幸せな新婚生活があった。
- シェルビー・スネイル
- 「今日の、予定は……そうか、9時から会議か」
- ヒロイン
- 「朝ごはん、食べていけそう?」
- シェルビー・スネイル
- 「そうだな……。十分時間はありそうだ」
- ヒロイン
- 「良かった! じゃあ今日は、バナナじゃなくて良さそうね」
- シェルビー・スネイル
- 「ああ」
- 苦笑をして、シェルビーがベッドサイドに置かれたバナナへと視線を向ける。
バナナは血糖値を上げてくれる。
だから寝起きすぐにオンライン会議がある時などに食べるつもりで、寝室に置いているというのだ。
バナナに、サプリメントに、ゼリー飲料。
シェルビーがそんな生活をしていたのももう随分前の話だ。
今は、私と一緒に朝ごはんを食べてから出社している。
それが夫婦になった時に二人で決めた事だったから。
どれだけ忙しくても。
夫婦で過ごす時間を大切にしたい。
それが、私とシェルビーの共通の気持ちだった。
けれど彼は相変わらず、多忙だった。
打ち合わせに、会議に、会食に。
ここの所ずっと働き詰めだ。
朝ごはんは一緒に食べられても、夕飯はいつも別々。
彼はゼリー飲料ばかりだった。
- ヒロイン
- 「でもシェルビー、今日で9連勤だしそろそろどこかで休まないと」
- シェルビー・スネイル
- 「ああ……そうか……。確かに、お前の言う通りだな」
- シェルビー・スネイル
- 「今までは、一人で走り続けるのが当たり前だったが……。
こうして注意してくれる人がいるというのは幸せなことだな。感謝している」
- アイシャドウを塗っている私を鏡越しに見つめて、シェルビーが目を細める。
- シェルビー・スネイル
- 「お前とももう少し、ゆっくり過ごしたいしな。どこかできちんと休みを取るとしよう」
- シェルビー・スネイル
- 「それに……ハネムーンも、まだだったしな。休みが取れたら行かないか?」
- ――ハネムーン。
彼からそんな言葉が出てくると思わなくて、私はつい嬉しくなった。
- ヒロイン
- 「ええ、行くわ」
- 思い切り抱きつくと、彼は照れた顔をして慌てた。