- 美味しそうなコーヒーとドーナツを受け取って、二人で店内の席につく。
何故かそこでも、メレニスさんは目を丸くして私を見ていた。
- ヒロイン
- 「あ、あのどうしましたか?」
- メレニス・レヴィン
- 「ああ、失礼いたしました。
その席を選ぶとも思わなかったもので」
- メレニス・レヴィン
- 「ふふ……。
本当に貴女といると予測不能で本当に楽しい」
- ヒロイン
- (そっか。
普段は全部視えてるから……)
- どのドーナツを選ぶか。どの席を選ぶか。
それが予想出来なかっただけで、メレニスさんは笑顔になってしまう。
『予測可能な毎日』の大変さが、垣間見えたような気がした。
何はともあれ、初『モゥ・ドーナツ』のドーナツだ。
クラリスが行った時も並んでて買えなかったと言っていたほどの人気店のドーナツ。
どんな味だろうと期待が膨らむ。
早速食べることにして、私はドーナツを手にした。
- ヒロイン
- 「いただきまーす!」
- メレニス・レヴィン
- 「ええ。いただきます」
- 早速一口食べてみると、不思議な味が口いっぱいに広がった。
なかなか、他の店にはない味だ。
- ヒロイン
- 「ん、美味しい……!」
- メレニス・レヴィン
- 「……ふふっ。
お口に合ったようで良かったです」
- すっと長い指でドーナツをつまみ、メレニスさんもぱくりと食べる。
途端、今まで見た中で一番いい笑顔になってしまった。
- メレニス・レヴィン
- 「やはり……ここの店のものが格別ですね」
- ヒロイン
- 「ふふっ、本当にここのドーナツが好きなんですね」
- メレニス・レヴィン
- 「ええ。利きドーナツができるぐらいには」
- ヒロイン
- 「利きドーナツ……?」
- メレニス・レヴィン
- 「実は、目を瞑って食べても、この店のものかどうか当てられるんですよ」
- ヒロイン
- 「えっ、そうなんですか?」
- メレニス・レヴィン
- 「ええ。いつか、披露いたしますね」
- クスクスと笑うメレニスさんは、相変わらずミステリアスで――
でも、とても楽しそうだ。