- ――今度こそ、本当に“ずっと一緒”だよ。
そう約束をして、私たちは『ごっこ』じゃない結婚式を挙げていた。
- ヒロイン
- 「……アラン……」
- 手にしたブーケは、彼が作ってくれたものだった。
ひとつひとつ、お花を選んで彼が想いを込めて作ってくれた物。
二人で選んだ結婚衣装に身を包んで、私たちは二人きりの結婚式を進めていく。
悪魔だから。祝福する神はいない。
牧師の祈りの言葉も、参列してくれる同い年の友達もいない。
世界で二人きりで、それでも私たちは幸せだった。
愛する人が、いてくれるから。
- アラン・メルヴィル
- 「俺、アラン・メルヴィルは……キミを生涯愛し、どのような時でも笑顔でいてくれるよう命ある限り守り続けることを誓います」
- ささやくような、優しい声。
慈しむ声に微笑み返して、
私も一緒に口を開く。
- ヒロイン
- 「私も……貴方を生涯愛し、どんな時も笑顔でいられるよう、命ある限り守り続けることを誓います」
- アラン・メルヴィル
- 「……キミが、守ってくれるの?」
- ヒロイン
- 「ええ。私が、アランを守るわ」
- アラン・メルヴィル
- 「そっか。……心強いな」
- 彼の手が私の頬を撫でる。
とびきり優しい眼差しが、そこにはあった。
- アラン・メルヴィル
- 「……指、出して」
- ヒロイン
- 「ええ」
- 手を取って、彼が指輪をはめてくれる。
左手の薬指に、永遠を誓う指輪が輝いている。
――婚約指輪じゃなくて結婚指輪だ。
- ヒロイン
- 「アランも。……指、出して」
- アラン・メルヴィル
- 「……うん」
- 彼にして貰ったのと同じように、彼の指にも指輪をはめる。
ステンドグラスから差し込む陽の光を受けて、おそろいの指輪が、きらきらと輝いていた。
幻想的なチャペルの中で、私たちは二人きりの結婚式を挙げる。
誰もいないチャペルに響いているのは、ドレスや花々の擦れる音と、噴水から水が流れる静かな音だけ。
- アラン・メルヴィル
- 「……なんだかここ、懐かしいな。
天界を思い出すよ」
- ヒロイン
- 「うん。……私も、同じ事を考えていたわ」
- 私たちがかつて過ごした、常春の楽園。
憧憬の中にだけある失った楽園を思い出して、私たちは微笑みあった。