料理の説明が終わって中居さんが部屋を出ていくと、琉輝は改めて畳に手をついた。
挨拶をするつもりだと気づいて、私も彼に倣おうとした。けれど――。
琉輝の母
「じゃー早速乾杯をしましょ!」
螢彩院・F・琉輝
「え」
琉輝の母
「あ、てか彼女さん、和食大丈夫だった?」
ヒロイン
「は、はい!
私も和食好きなので嬉しいです」
螢彩院・F・琉輝
「うん。納豆も美味しそうに食べてたし。
大丈夫……だと思う」
琉輝の母
「納豆食べられるのね! 良かったー。
じゃあ早速、お祝いしましょ!
琉輝、婚約おめでとー!」
螢彩院・F・琉輝
「……あの、それより、先に報告させて欲しいんだけど」
こほん、と咳払いをして琉輝がご両親を見る。
そして、もう一度畳に手をついた。
螢彩院・F・琉輝
「お父さん、お母さん。紹介させて下さい。
彼女が、僕が今お付き合いさせて頂いている方です」
螢彩院・F・琉輝
「彼女とは、姉さんが紹介してくれた結婚相談所で知り合いました。
元々は僕の担当アドバイザーでしたが退会後に、仕事を共にする機会があり――」
螢彩院・F・琉輝
「物事に対する向き合い方や考え方、僕の事を考えて話してくれる優しさを感じ、仲を深めました」
螢彩院・F・琉輝
「幸せな時も、大変な時も、一生傍にいて欲しいと願うのは彼女だけです。
それで……」
螢彩院・F・琉輝
「彼女と、結婚をします。
今日はその報告をしに、日本へ戻ってきました」
そう言って、琉輝は深々と頭を下げた。
私も一緒になって、見様見真似で頭を下げてみる。
堅苦しいのはいいって言っていたけれど。
でも、こういう『文化』も人間が作ったものだ。
――きっと、意味はあると思う。
実際、こうして挨拶することで、彼と結婚をするんだという実感が、私にも湧いてきた。
結婚の約束をした。
でも、それだけでは得られなかった感情が、確かにここにある。