ギル・ラヴクラフト
「……」
そっと唇に触れる柔らかい感触に、うつらうつらと眠りかけていた私はゆっくりと目を開いた。
ヒロイン
「……ギル?」
ギル・ラヴクラフト
「あはは。おはよ。……寝てた?」
ヒロイン
「あれ? そうみたい……」
自分では寝ていたつもりがなかったのに、目の前に、さっきまで無かったはずのギルの顔がある。
どうやら、バルコニーの長椅子に横たわって波の音を聞いているうちにうたた寝してしまったらしい。
小さく笑って、彼の首に腕を回した。
ヒロイン
「ふふ。おはよ、ギル」
ギル・ラヴクラフト
「おはよ」
吐息がかかったと思うと、彼の唇が私の唇に重なる。
さっきまどろんでいた時に、夢の中で貰ったのと同じキス。
大好きなギルのキスに、うっとりと目を閉じる。
――結婚式が終わってハネムーンに来てからも私たちは、こうしてずっと一緒にいた。
けれど、いくら求め合っても飽きる時が来ない。
素肌のぬくもりも、頭を撫でてくれる指の感触も知れば知るほどにもっと欲しいと欲張りになる。
ギル・ラヴクラフト
「……ジュース、届いたよ。飲む?」
ヒロイン
「あ、そっか。 ルームサービスでドリンクを頼んでたんだっけ……」
ギル・ラヴクラフト
「うん。甘くて美味しいよ。どーぞ」
ギルから渡されて、ジュースを一口飲む。
さっぱりとした甘さが喉に心地よくて、身体がすっとするようだった。
マンゴーやパイナップル、ライムなどの入った、ホテルで一番人気だと言われているジュースだ。
ヒロイン
「美味しい……」
ギル・ラヴクラフト
「あははっ、良かった。ディナーは2時間後ぐらいだって。だからまだ寝てていいよ」
愛おしそうに目を細めて、ギルが私の頬を、親指の腹でゆっくり撫でていく。
ギル・ラヴクラフト
「疲れてるでしょ? 昼間ビーチではしゃいでたし、結婚式が終わってからはあんまり休めないでいたしさ」
ヒロイン
「ふふっ、ありがと。でも大丈夫よ。ギルがずっと一緒だったもの」
ギルが――大好きな人が一緒だから疲れよりも、幸福感の方が大きい。
ジュースを置いてもう一度彼の首に縋り付くと、私からもキスをした。