浮遊感があり、そこから落ちるまでは一瞬。
気がつくと貞吉君の腕が、
私の身体を力強く抱きとめてくれていた。
確かに私を支える貞吉君の腕は、
しっかりと鍛え上げられていた。
筋肉質な感触が、着物の上からも伝わってくる。
貞吉君が、じっと顔を見下ろしてくる。
なんだか胸の鼓動が速く、落ち着かない。
……ああ、そうか。
私は木から飛び下りるのが怖かったんだ。
この胸の高鳴りはきっと、その余韻だろう。