佐野ゆずりは
「これは……?」
白虎神
「『当千銃』と呼びましょう。
尽きぬ無念を弾丸として撃ちだす、特別な銃です」
佐野ゆずりは
「当千銃……」

さっきまでの熱が嘘のように冷たく、
ずっしりと重たい。

白虎神
「ゆずりはさま。当千銃を使って、
いずれ生まれる『少年たちの悲劇』を防いでください」
白虎神
「もし成し遂げた暁には、どんな願いでも叶えます」
白虎神
「たとえば、あなたの兄上を蘇らせる――
そんな望みでも、
私たちの力なら叶えることができる」

――これは、夢だろうか。

夢に決まっている。

そう思う一方で、
『夢ではない』という妙な実感がある。

佐野ゆずりは
(ああ、もう目が覚める――)

確かめたいことはたくさんある。

なのに、抗いようもなく意識は覚醒に向かっていき、
夢の世界が曖昧に薄れていく。

白虎神
「約束を果たしてくれますね、ゆずりはさま」
佐野ゆずりは
「約束……? それって――」

まだ、何も分からない。

確かなことがひとつもない。

それでも――

私は、力を選んだ。

そんな実感だけが残っていた。