いったい、何が起きたのだろう。

戸惑っている私の耳に飛び込んできたのは――

神崎宗十郎
「女。何をしている」
佐野ゆずりは
「えっ――ひゃっ……!?」

鋭く咎める声だった。

一瞬にして、私の身体は地面に圧しつけられる。

凄い力で腕を押さえつけられて、抗いようもない。

私を見下ろすのは冷たく鋭い双眸だ。
深い疑いを込めた眼差しに射すくめられてしまう。

神崎宗十郎
「……誰の差し金だ。言え」
神崎宗十郎
「この銃で撃ち殺すつもりできたのか。
残念だったな」

彼は川で泳いでいたのか、
濡れた髪から滴る水が頬に当たる。

よく鍛えられていると一目で分かる筋肉質な体には
ところどころ古傷が残っていて、
実戦経験の多さを窺わせた。

彼にとって、丸腰の女を叩き斬るなど
造作もないことだろう。

急激に冷や汗が滲みだす。

佐野ゆずりは
「勝手に荷物に触れてしまって、すみません」
佐野ゆずりは
「でも、あなたを殺そうなどとは
思っていません……!」

強い殺意に圧倒されて、恐怖でまともに声も出ない。

神崎宗十郎
「脇差をどこへやった。ここにあっただろう」