佐野ゆずりは
「また八重さんのごはん食べたいなぁ……」

八重さんが私に教えてくれたのは、
砲術だけではない。

料理も、掃除も、繕いものも――
生きていく上で必要なことは
八重さんがひととおり教えてくれた。

兄上と二人暮らしだった私に
親切に世話を焼いてくれたのは八重さんだった。
男勝りだと評判の八重さんも、
今は立派に一家の妻として家庭を支えている。

私が尊敬する憧れの人だ。

岡本三郎
「……お前も負けてねーよ?」
佐野ゆずりは
「えっ? ……男勝りってこと?」

憧れの八重さんみたいだと言ってもらえるのは
ちょっと嬉しいかもしれない。

岡本三郎
「――じゃなくてっ!
これ。メシ」
岡本三郎
「毎日食っても飽きねえし、美味いよ」
岡本三郎
「……これなら俺、毎日食える」
佐野ゆずりは
「うん。いつもきれいに食べてくれてありがとう」
佐野ゆずりは
「って、岡本家の食費でごはん作ってる私が
言うことじゃないけど……」
岡本三郎
「いやっ、だから! そうじゃなくて――」
岡本三郎
「ああくそっ……おかわり!」