飯山さんとは、一度河原で会ったことがある。

飯山さんもそう気づいたのだろうか?

私が女性の身ながらこの教室にいることに
疑問を感じているのかもしれない。

佐野ゆずりは
(大蔵さんから事情は聞いてる……よね?)
飯山貞吉
「…………」
佐野ゆずりは
(まさか、全然知らない――とか?)

確認したいけれど、
ここでは込み入った話はできない。

どうしよう。

焦りと緊張感が高まっていった、そのとき。
飯山さんが口を開いた。

飯山貞吉
「あなたの顔」
佐野ゆずりは
「えっ……何かついてますか?」
飯山貞吉
「そうではなくて。
綺麗ですよね」

意外な言葉に、焦りも緊張も吹き飛んでしまう。

佐野ゆずりは
「は……はあ……?」
飯山貞吉
「作りがいいという意味です」