移動中、大蔵さんは少しも喋らない。
納得しかねることを
身の内で堪えているように。
出陣する前から現地へ足を運んで
入念な下調べをしていた。
それなのに、
いざ出陣してから呼び戻されてしまうなんて。
いつもと同じ柔らかい口調だけれど
その響きはどこか冷淡だ。
振り返ってみると、
大蔵さんは見たことのない冷たい表情をしていた。
だけど、すぐに私の視線に気づいて
いつものにこにこした表情に戻る。
見てはいけないものを見たような心地になって、
慌てて前を向いた。