ユーリア
「ミアーシュ? なにを見ているの?」
ミアーシュ
「え? ああ……もう暗いし、特に面白い物が見えるわけじゃないんだけど、
いつものクセでついね」
ユーリア
「……そう言えばミアーシュは、塔の中にいたとき、
いつもそんなふうに窓の外を眺めていたわね」
ミアーシュ
「うん。今はさ、気になる物があるなら、扉を開けて外に出て行っていいんだよね。
フベルトが兵士を連れて乗り込んできたときはびっくりしたけど……
僕たち、本当に自由の身になれたんだなぁって」
ユーリア
「ミアーシュ……」

私は、酷い怪我をしたミアーシュが、お城の木々の間に横たわっていたときのことを思い出す。

ユーリア
「ねぇ、ミアーシュ。ひとつ聞きたいことがあるんだけど」
ミアーシュ
「え? なに?」
ユーリア
「あなたはお城にくる前、どこにいたの?」
ミアーシュ
「え……?」
ユーリア
「月に一度の外出のとき、怪我をして倒れているあなたを見つけて……。
お城で誰かが飼っているカナリアだと思ったけど、あなたに見覚えがある人はいなかった」
ミアーシュ
「……うん。僕、あのお城の人に飼われてたわけじゃないよ」
ミアーシュ
「もっと遠いところから逃げてきたんだ」
ユーリア
「え? 逃げてきた……?」