魔術師
「姫さま。せっかくの逢い引きですし、手を繋いでもいいですか?」
ユーリア
「え!? は、はい……!」

突然の行動にドキドキしつつ、
私は魔術師さんのほうへ片手を伸ばす。

すると彼は、恥ずかしそうに私の手を取って
5本の指を交互に絡めた。

魔術師
「変なことを言ってしまって本当にすみません」
魔術師
「女性の扱いに慣れていないせいか、想像以上に緊張しているようです」
魔術師
「私も、こんなふうに誰かと一緒に過ごすのは初めてで……」
魔術師
「あなたと違って、身近にそういう対象がいなかったわけではないんですが、
もっと他に私の心をとらえて離さないものがあったんです」
魔術師
「だから私は……ずっとそのことに夢中で、他のものはなにも目に入りませんでした」
魔術師
「でも、今は違います」
魔術師
「私はあなた自身を、ずっと見ていたいと思ってしまった」
魔術師
「あの日……あなたと唇を触れ合わせてしまったこと、忘れて下さいと言いましたけど、
やっぱり忘れないで下さい」
魔術師
「私も、忘れませんから」
ユーリア
「っ……魔術師さん……」

熱っぽい眼差しに頭の芯がぼうっとし、
胸の鼓動はどんどん早く、大きくなっていく。

ユーリア
(私も何度も忘れようとしたけれど、どうしても駄目だった)
ユーリア
(ルドヴィクに言われたときは、まだ自分でもよくわかっていなかったけれど……)
ユーリア
(私はやっぱり、魔術師さんのことが好き……なのかな)