▼奥音里
中部地方に位置する人口約2500人の小さな田舎町。山と川に囲まれた三日月型をしており、東側の橋と西側に抜けるトンネル以外、出入りできる箇所はない。
多くの伝承や言い伝えを残している町で、最近、誰かが作ったSNSサイト「奥音里禁忌倶楽部」をきっかけに、近年はミステリースポットとしてアングラな若者たちの注目を集めている。
▼奥音里禁忌倶楽部
奥音里に言い伝えられる古い伝承から最近の奇妙な噂まで、そのミステリアスな魅力を紹介しつつ、集まった者たちでその真相を探り、明らかにしていこうという目的で作られた奥音里非公認SNSサイト。この度、その管理人の呼びかけで奥音里へのオフ会旅行が開催される。
▼奥音里七不思議
奥音里に古くから伝わる伝承を中心に、代表的な7つの謎をまとめたもの。既出の「屍者伝説」や「紫姓草」などがそれに含まれる。
それぞれに固定のナンバリングがされているようだが、どうやら入れ替え制のようで、時代により7番目は常に入れ替わっている模様。
最も新しい「奥音パンダ」は7番目の謎として数えられている。
▼風厘館
奥音里唯一の宿泊施設で、叢雲ユヅキがオーナーを務める。部屋数は少ないが、英国風庭園やかけ流しの温泉、和カフェ&レストラン「風厘カフェ」等を併設しており、宿泊施設としては充実している。
つい最近、叢雲ユヅキがほとんどのスタッフを解雇してしまい、スタッフ不足の危機に陥っている。
▼風厘カフェ
風厘館に併設されている和カフェ&レストラン。スイーツのみならず、和洋中からイタリアンまでメニューが豊富に用意されており、宿泊者以外も利用できるため、わざわざ足を運んでくる住民も多い。
一番人気は風厘カフェ特製オムライス。
最近、専属シェフが病に倒れ、代わりに10代の若いシェフが就任したらしい。
▼屍者伝説
奥音里に残る伝承のひとつ。梅雨が明け夏になるとこの町の死人が蘇り、町を闊歩するというもので、蘇った死人は「屍者」と呼ばれる。屍者がこの世界にとどまるには、生者を殺め続けなければならないとされる。
▼屍者
奥音里に言い伝えられている「屍者伝説」で語られる、生ける死人。屍者は生者の生気を奪い続けないと、この世界に存在することができないとされ、その為、人を殺める殺人鬼として恐れられている。
▼紫姓草
「しせいそう」とよむ。薄紫の花をつける。奥音里のどこかに咲いているとされる伝承の中の花。隠語として「しかばねぐさ」とも言われ、死した者を現生に呼び戻す力があるとも。
▼叢雲家
代々、奥音里を取り仕切ってきた名家。現在の当主は叢雲キョウジ。その一人息子である叢雲ユヅキが次期当主と目されている。
町の高台に大きな屋敷を構えており、奥音里を見下ろすように威厳を放っている。
屋敷の中に足を踏み入れた者は少なく、住民たちは「叢雲邸」と呼び、あまり近づこうとはしない。
▼夏祭り
毎年8月、奥音里で開かれる夜祭。正式には「奥音神社例大祭」という。元々は、夏に蘇る屍者を弔う催しだったとする説もあるが、定かではない。
目抜き通りから奥音神社まで夜店が立ち並び、非常に華やか。
奥音里の若者たちの間では、異性のパートナーと訪れると永遠の愛が約束されるというロマンチックな慣わしがここ最近生まれている。
▼失踪事件
1年前の夏、主人公<花蒔イチコ>の兄がこの奥音里で姿を消した事件。山での遭難事故という形で、すでに捜索は打ち切られている。
なぜ奥音里を訪れたのかも不明のままである。
▼AUK ZEROアークゼロ
ここ10年の芸能界をけん引した国民的スーパーアイドルグループ。メンバーの脱退を経てもなおトップを走り続け、数々の記録を打ち立てたが今年、突然の解散宣言。グループとしての活動を停止した。
7人組で、不動のセンターは絶対的エースといわれているA-TO(エイト)。
▼A-TOエイト
国民的スーパーアイドルグループ「AUK ZERO」の不動のセンターであり、絶対的エース。グループ解散発表後、ソロ活動に専念することを表明。
本名不明、その素性はベールに包まれている。
▼LOVESICK
A-TOのソロ曲としてアルバム用にレコーディングされたが、ファンの間で人気が高まり、A-TO主演のドラマ主題歌に起用されて大ヒットした。実は発売中止になった「お蔵入りバージョン」が存在するとファンの間では囁かれている。
▼限定ライブ
国民的アイドルのA-TOが8月8日に奥音里で開催する、奥音里の住民限定のシークレットライブ。奥音中学校の体育館で行われるらしい。
7月の終わりに突然発表したが、ネットにも新聞にも告知をしていない。
▼奥音パンダ
奥音里の非公認ご当地キャラクター。作者が不明のため、パブリックドメインになっている様子。
インターネットを通じて人気をじわじわと集め、今では町のシンボルキャラクターとなっている。
運が良ければ、目抜き通りを中心にその「本人」に会うこともできるが、中に誰が入っているのかは、町の住民ですら誰も知らない。
話しかけても何も応えないが、お土産で見かける奥音パンダは「美味しいよ!」「奥音里へ行ってきました」などの売り文句を饒舌にしゃべっている。
▼ツチノコ急便
奥音里近辺でのみ活動する小さな宅配業者。有名大手と業務提携しているらしく、その利便性は意外と高い。
その活動範囲の狭さから、あまり見かけることも多くなく、ツチノコ急便のトラックを見たらいいことがあるとか、ツチノコの舌にキスすると恋愛が成就するなどの伝説が若者の間で流布されている。